Scientific Englic開発メモ

Scientific Englic (Scientific English-like language)の開発についてのメモです。細かいことに拘らずに気楽に書いていきます。

2016年05月

本書では、例として「kick the bucket」(死ぬ)や「long in the tooth」(年を取っている)等が挙げられています。

本書の該当部分を端的にまとめると、慣用表現は、非ネイティブの学習負担が大きく、基本的にネイティブ同士でしか通じないものなのだから、国際語であるEnglicでは使わないというのがEnglicの立場ということになります。

この主張も筋が通っていますが、非ネイティブの慣用表現も一緒に規制しないと一貫性が保てなくなってしまいます。そうなってくると、何を慣用表現とするのかという標準化の問題が生じてきてしまう余地があり、一気に難しい問題になってしまいます。

Scientific Englicでは、もっと単純な立場を採用しようと思っています。すなわち、正確な伝達が目的であるのだから、文章は文字通りに読まれるという立場です。「kick the bucket」は文字通り「バケツを蹴る」という意味になりますし、「long in the tooth」は文字通りに「歯が長い」という意味になります。つまり、慣用表現であるかどうかが問題なのではなく、書かれていることが文字通りの科学的な事実であるかどうかが問題になるわけです。

一般的に不規則変化というのは慣習的なものであり、特に英語の場合には昔の用法を引き摺っているために生じているものが多いとされています。

理論的な整合性を重んじる立場から不規則変化をやめたいと考えている人々はEnglicとは別に存在しているようです。実際に、「matrix」の複数形「matrices」/「matrixes」のように、日常的ではない(ただし、自然科学ではよく用いる)用語の不規則変化は共存状態になっているものもあり、やがては不規則変化は消えていくのではないかという見方もあります。

一方で、現状の日常用語において、「went」を「goed」と言うのは、やはり不自然であり、目立つ表現になってしまうのは確かです。

Englicは英語ではないため、不規則変化を認めていません。エスペラントと同様に人工言語であるため、文法に不規則性は存在しないという立場です。

このEnglicの主張は筋は通っているのですが、実際にやってみろと言われると心理的な抵抗が生じてしまいます。慣習に逆らうというのは容易なことではありません。現実に人工言語が理論的に優れていたとしても一般に普及しないというのは、そのような慣習の慣性の大きさによるものと思われます。

また、他の英語の文法を取り入れておいて、不規則変化の導入を拒絶するためには、その取捨選択についての根拠が必要になります。本書の記述では暗黙の内に不規則変化を悪いものとして考えているように読めるのですが、この点については暗黙的に処理するのではなく、明示的に論じないと理論としても不完全な部分が出てきてしまいます。

そもそも不規則変化の可否がルール化すべき重要なことなのかどうかも議論の余地があるでしょう。最近は、文法チェッカーがありますので、文章においては問題は生じません。近未来においては日常会話でも機械翻訳が普及するでしょうから、会話においても不規則変化が問題になることはなくなるわけです。

これらのことを踏まえて、Scientific Englicでは不規則変化については何も規定しないことにしたいと考えています。「使っても使わなくてもご自由にどうぞ」ということで問題ないでしょう。Scientific Englicが自然言語でなく、慣習に囚われないというのは理念上、自明のことですが、伝達の正確性を損なわない程度の慣習まで敢えて否定する必要性はないと思われます。

Englicの考案者である鈴木孝夫氏の著書「英語はいらない!?」に、以下のEnglicのルール例が掲載されています。

  • 英語の不規則な変化(動詞や名詞など)を無視する。
  • イディオム(慣用表現)は使わない。
  • やさしい動詞と前置詞の組合せは使わない。
  • 早口は禁止する。
  • 日本人はなるべくyes、noを使わず、質問の動詞を肯定・否定で使う。

このルール例について、シリーズで考えてみたいと思います。

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